Echeveria hyalina E.Walther
基本情報
- 科
- Crassulaceae(ベンケイソウ科)
- 属
- Echeveria
- 学名
- Echeveria hyalina E.Walther
- 命名者・著者引用
- E.Walther
- 記載年
- 1958
分布
自生地に関する記録
本文/補足・記録
## 植物名
ヒアリナ
## 基本情報
・植物名:ヒアリナ
・学名:Echeveria hyalina E.Walther
・科名:Crassulaceae(ベンケイソウ科)
・属名:Echeveria
・命名者:Eric Walther(エリック・ウォルター)
・記載年:1958年
Echeveria hyalina E.Waltherは、Eric Waltherによって1958年に正式記載された学名です。
原記載は、Cactus and Succulent Journal (Los Angeles) 30: 43, figs. 24–25 (1958)に掲載されています。
ヒアリナは単なる園芸名や流通名ではありません。一方、2026年現在のPlants of the World Online(POWO)では、独立したaccepted speciesではなく、Echeveria simulans Roseの異型同物異名として扱われています。
## タイプ
2017年のInternational Crassulaceae Network(ICN)の整理では、タイプとして、CAS 234168が示されています。
この植物はMexico City(メキシコシティ)で栽培されていた材料に由来します。
Waltherは1934年にSr. Halbinger(ハルビンガー)から生きた植物を受け取りましたが、Halbinger自身も後に、その植物がもともとどこから得られたものか思い出せなかったと記録されています。
そのため、現時点で確認できるのは、Type:CAS 234168、由来:Mexico Cityで栽培されていた植物、Waltherの入手:1934年、Sr. Halbingerから、元の野生採集地:不明というところまでです。
Mexico Cityは植物が栽培されていた場所であり、野生のタイプ産地として扱うことはできません。
また、CAS側の直接資料でtype statusを確認できていないため、ここでは「Holotype」ではなく「Type」としています。
## 分布
原記載に用いられたタイプ材料の元の野生産地は分かっていません。
一方、1955年にはWigginsがGuanajuato(グアナフアト)で野生植物を採集し、その植物をWalther自身がEcheveria hyalinaと同定した記録があります。
これは、hyalinaという名称と野生個体群を結びつける重要な記録ですが、このGuanajuatoの植物が1958年のタイプ材料そのものだったわけではありません。
2017年にICNがEcheveria hyalinaを独立種として再評価した際には、Guanajuato、Hidalgo(イダルゴ)、Querétaro(ケレタロ)、San Luis Potosí(サン・ルイス・ポトシ)への分布が示されました。
ただし、これは2017年にhyalinaを独立種として扱った分類整理上の分布です。
2026年現在のPOWOでは、Echeveria hyalinaはEcheveria simulansの異型同物異名として扱われています。
## 分類
Echeveria hyalinaの分類上の扱いは、時代によって変化してきました。
1958年、Eric WaltherがEcheveria hyalinaとして正式記載しました。
2003年、KimnachはEcheveria hyalinaをEcheveria elegansのsynonymとして扱いました。
2017年、International Crassulaceae NetworkはEcheveria hyalinaを独立種として再評価し、復活させました。この整理では、hyalinaはelegansよりsimulansに近い植物として扱われています。
2026年現在、POWOではEcheveria hyalinaをEcheveria simulans Roseのheterotypic synonym(異型同物異名)として扱っています。
また、現在のICNのhyalinaページも「See Echeveria simulans」としてsimulans側へ案内しています。
したがって、ヒアリナは正式に記載された学名ではあるものの、現在のPOWOでは独立種として採用されていない、という位置づけになります。
## Echeveria sanchez-mejoradaeとの混同
ヒアリナの分類史では、Echeveria sanchez-mejoradaeとの名称混同にも注意が必要です。
2017年のICNでは、Hidalgoでsanchez-mejoradaeという名称で呼ばれてきた植物の一部について、Echeveria hyalinaと同じ植物として整理しています。
しかし、本来のEcheveria sanchez-mejoradae E.Walther ex Bischofbergerは別のtaxonです。
2017年に正式に有効化され、タイプとしてCAS 414603が指定されています。
2026年現在、POWOもEcheveria sanchez-mejoradaeをaccepted speciesとして扱っています。
したがって、Echeveria sanchez-mejoradae=Echeveria hyalinaと単純に扱うことはできません。
過去に同じ名称が異なる植物へ使用されたことによる、名称上の混乱として整理する必要があります。
## 染色体数
2017年のICN資料では、Echeveria hyalinaとして扱われた複数の材料から異なる染色体数が報告されています。
タイプ材料ではn=34、Wigginsの材料ではn=32、San Luis Potosíの材料ではn=31または32、Querétaroの採集材料ではn=60が記録されています。
そのため、「ヒアリナの染色体数はn=○○」と一つの値に固定することはできません。
地域や採集材料によって複数の値が報告されています。
## hyalinaという名称
hyaline(ハイアリン)は、植物学で「透明な」「半透明の」「ガラス質の」といった意味で使われる語です。
Waltherの原記載でも、葉縁についてhyaline marginsという表現が使われています。
ただし、今回確認した資料には「透明な葉縁に由来してhyalinaと命名した」と直接説明した記録は確認できていません。
そのため、種小名の由来として断定するのではなく、hyalinaは“透明な・ガラス質の”という意味に関係する語で、原記載でも葉縁がhyalineと表現されているとするのが適切です。
## 園芸流通
分類学上は現在POWOでEcheveria simulansの異型同物異名とされていますが、園芸・種子流通では現在もEcheveria hyalinaという名称が使用されています。
Köhresでも2026年現在、hyalina名義で複数の地域ラベルが確認されています。
Echeveria hyalina Ahualulco, SLP、Echeveria hyalina Gilo、Echeveria hyalina Pinal de Amoles、Echeveria hyalina Rio Blanco、Echeveria hyalina San Luis de La Paz、Echeveria hyalina Santa Maria Mexicano、Echeveria hyalina Santo Domingo、Echeveria hyalina Rancho Viejo AGが確認されています。
これらは、現在のPOWOでhyalinaがsimulansの異型同物異名とされているからといって、自動的に「Echeveria simulans ○○」へ書き換えることはしません。
Köhresが実際に使用しているEcheveria hyalina ○○という流通・地域ラベルをそのまま記録し、それぞれの由来や分類上の位置づけは個別に確認する必要があります。
## 2026年の分類研究について
2026年のTAXON論文では、Echeveria simulansを含むグループについてUrbiniaを用いる分類が示されています。
同研究ではUrbinia simulansという名称が使用されていますが、今回確認した範囲ではhyalinaが独立した分析taxonとして扱われたことや、Urbinia hyalinaという新組合せが正式に示されたことは確認できません。
そのため、Urbinia hyalinaという名称を推測で使用することはしません。
2026年現在のPOWOでは、引き続きEcheveria simulans Roseがaccepted nameです。
異名・旧学名
- Echeveria hyalina E.Walther(POWOではEcheveria simulans Roseのheterotypic synonymとして扱う)
出典・参考資料
- Walther, E. (1958). Echeveria hyalina. Cactus and Succulent Journal (Los Angeles) 30: 43, figs. 24–25.
- International Plant Names Index (IPNI) — Echeveria hyalina E.Walther
- International Crassulaceae Network — Echeveria hyalina / Echeveria simulans
- Kimnach, M. (2003). Echeveria. In: Illustrated Handbook of Succulent Plants: Crassulaceae.
- Plants of the World Online (POWO) — Echeveria simulans Rose
- Plants of the World Online (POWO) — Echeveria sanchez-mejoradae E.Walther ex Bischofberger
- International Crassulaceae Network — Echeveria sanchez-mejoradae
- Cruz-López et al. (2026). TAXON
- Köhres Kakteen — current seed list, 2026