シムランス イトゥルビデ

Echeveria simulans Iturbide

基本情報

Crassulaceae(ベンケイソウ科)
Echeveria
学名
Echeveria simulans Iturbide

分布

自生地に関する記録

Iturbideの地域名を伴ってKöhresから流通するEcheveria simulansです。Köhres商品番号は8392です。Iturbide周辺ではMEXU 162543やJ. Reyes 8180などの標本・解析記録がありますが、Köhres 8392とこれらの標本・試料との直接的な由来関係は確認できていません。

本文/補足・記録

## 植物名

シムランス イトゥルビデ

## 基本情報

・植物名:シムランス イトゥルビデ
・Köhres流通表記:ECHEVERIA simulans Iturbide
・Köhres商品番号:8392
・基礎となる種:Echeveria simulans Rose
・科名:Crassulaceae(ベンケイソウ科)

「シムランス イトゥルビデ」は、Iturbide(イトゥルビデ)の地域名を伴ってKöhres(ケーレス)から流通するEcheveria simulansです。

Köhresでは、ECHEVERIA simulans Iturbideという表記で種子販売されており、商品番号は8392です。

この8392はKöhresの商品番号であり、採集番号、collection number、field number、標本番号ではありません。

## Iturbideとは

Iturbideは、Mexico(メキシコ)・Nuevo León(ヌエボ・レオン州)に実在する自治体・地域です。

International Crassulaceae Network(ICN)のEcheveria simulans資料でも、From Iturbide (Nuevo Leon)として同地域のシムランスが掲載されています。

そのため、IturbideとEcheveria simulansの地域対応は、Köhresの商品名だけによるものではありません。

## Iturbide周辺の標本記録

Iturbide周辺では、Echeveria simulansの実際の標本記録が確認されています。

Herbario Nacional de México(MEXU)には、MEXU 162543、採集者Charles H. Uhl、採集番号U1919、採集日1970年8月19日、産地Nuevo León州、Iturbide東方4.6 miles、Santa Rosa Canyon南側、Hwy 60沿い、標高1140mという標本が残されています。

この記録により、1970年にIturbide東方でEcheveria simulansが採集されたことを標本資料から直接確認できます。

ただし、1140mはUhl U1919という個別標本の採集標高です。

「シムランス イトゥルビデの標高は1140m」と一般化することはできず、Köhres 8392の採集標高としても扱いません。

## 分子系統研究で使われたIturbideの植物

2019年の分子系統研究では、Iturbide周辺で採集された別のEcheveria simulansがDNA解析に使用されています。

・採集者:J. Reyes
・採集番号:8180
・産地:Nuevo León州、Iturbide東方1.5km、carretera Matehuala–Linares
・voucher:MEXU
・試料コード:JE-8180

この試料には、MG521489.1、MG521765.1、MG521640.1というGenBank accessionが割り当てられています。

したがって、Iturbide周辺のEcheveria simulansは、1970年のUhl U1919とは別の採集材料によっても確認され、実際に分子系統解析へ使用されています。

## 2026年研究との関係

2026年のTAXON論文では、基礎種Echeveria simulansに相当する植物を、Urbinia simulans (Rose) L.E.Cruz-Lópezという名称で解析しています。

同研究で使用されたMG521765.1、MG521640.1などの配列は、2019年論文でIturbideのJ. Reyes 8180に割り当てられていたものです。

そのため、Iturbideで採集されたシムランス由来の分子データの一部が、2026年研究でもUrbinia simulansの解析データとして利用されたことが確認できます。

ただし、2026年論文では8180やIturbideという採集情報自体は再掲されておらず、この対応は2019年論文のaccession番号との照合によるものです。

## Köhres 8392との関係

Köhres公式資料から確認できるのは、ECHEVERIA simulans Iturbide、商品番号8392という販売情報です。

一方、Köhres 8392について、元となった採集者、採集年月日、採集番号、field number、herbarium voucher、正確な採集地点、座標、植物の採集標高は確認できていません。

そのため、Köhres 8392=Uhl U1919、Köhres 8392=J. Reyes 8180とは扱いません。

ICN掲載のIturbide株とも直接的な系譜関係は確認できていません。

Iturbide周辺にEcheveria simulansが実際に存在することと、Köhres 8392がどの野生採集材料に由来するかという問題は分けて扱います。

## Iturbide地域での栽培記録

2022年のIturbide地域を対象とした民族植物学研究でも、Echeveria simulans Roseが記録されています。

資料番号はEE25446で、現地名としてSiemprevivaが記載されています。

ただし、この資料ではprivate gardensで栽培される植物として扱われているため、Iturbideにおける野生自生の主要な証拠としては使用しません。

野生分布については、Uhl U1919やJ. Reyes 8180の記録を優先します。

## 日本国内での流通

日本国内でも、Köhres種子由来として、Echeveria simulans Iturbideの実生苗が流通した記録があります。

The Garden PartyではKöhres実生苗として掲載された例が確認されています。

ただし、日本国内で「シムランス イトゥルビデ」として流通するすべての植物がKöhres 8392に由来することまでは確認できていません。

## 分類上の位置づけ

基礎となる植物は、Echeveria simulans Roseです。

POWOでは2026年現在もEcheveria simulansをacceptedとして扱っています。

Iturbideについては、今回確認した範囲では植物学上のvariety(変種)、subspecies(亜種)、forma、cultivar(栽培品種)として正式に成立した名称ではありません。

そのため、Echeveria simulans var. IturbideやEcheveria simulans ‘Iturbide’といった名称は使用しません。

tanitanien植物図鑑では、「Iturbideの地域名を伴ってKöhresから流通するEcheveria simulans」として扱います。

また、2026年の分子系統研究ではUrbinia simulansという名称が使用されていますが、今回確認した同論文では正式なcomb. nov.(新組合せ)としての命名処理は確認できていません。

そのため、本記事でも基本学名にはEcheveria simulansを使用します。

## 確認できていないこと

Köhres 8392について、採集者、採集年月日、採集番号、field number、herbarium voucher、正確な採集地点、座標、採集標高は確認できていません。

また、Köhres 8392とUhl U1919、J. Reyes 8180、ICN掲載株との直接的な由来関係も確認できていません。

確認できていない系譜を、地域名の一致だけから推測して補完することはしません。

## 関連する原種 Echeveria simulans

シムランス イトゥルビデの基礎となる植物は、Echeveria simulans Roseです。

シムランス本種の原記載、タイプ、分布、シノニム、2026年のUrbiniaとの分類上の関係については「シムランス」の図鑑記事で扱います。

出典・参考資料

  • Köhres Kakteen — ECHEVERIA simulans Iturbide, item 8392
  • International Crassulaceae Network — Echeveria simulans, From Iturbide (Nuevo Leon)
  • Gobierno del Estado de Nuevo León — Iturbide
  • UNAM / MEXU — MEXU 162543, Charles H. Uhl U1919
  • de la Cruz-López et al. (2019). Phylogenetic relationships of Echeveria (Crassulaceae) and related genera from Mexico based on three DNA barcoding loci
  • Cruz-López et al. (2026). TAXON — phylogenetic treatment including Urbinia simulans
  • 2022 Iturbide ethnobotanical study — Echeveria simulans Rose, EE25446
  • The Garden Party — Echeveria simulans Iturbide, Köhres seedling records
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