カルニカラー テナンパ

Echeveria carnicolor (Baker) É.Morren

カルニカラー テナンパ(Echeveria carnicolor (Baker) É.Morren)|tanitanien植物図鑑

基本情報

科
Crassulaceae
属
Echeveria
学名
Echeveria carnicolor (Baker) É.Morren
命名者・著者引用
(Baker) É.Morren
記載年
1874

分布

原産国
Mexico
州・地域
Veracruz
具体的産地
Tenampa・Barranca de Tenampa

自生地に関する記録

Veracruz州Barranca de Tenampaで1906年、1973年、現代の研究材料として複数の採集記録がある。Tenampaの地域名を伴って流通するEcheveria carnicolor系統。

本文/補足・記録

「カルニカラー テナンパ」という名前には、どこまで確かな根拠があるのでしょうか。

資料をたどると、Tenampaは単なる園芸上の地域名ではありませんでした。

Veracruz(ベラクルス)州のBarranca de Tenampaでは、20世紀初頭にすでに Echeveria carnicolor が採集されています。

その後も同じ地域から標本が残され、現代になるとTenampaの植物が染色体やDNA量を調べる研究にまで使われました。

一つの地域名から、100年以上にわたって残されてきたカルニカラーの記録を追うことができます。

最初の記載では詳しい自生地が分からなかった

Echeveria carnicolor の植物学上の歴史は1870年までさかのぼります。

ジョン・ギルバート・ベイカー(John Gilbert Baker)が、Cotyledon carnicolor という名前で記載したのが始まりです。

ベイカーが記載したのは、ヨーロッパで栽培されていたメキシコ由来の植物でした。そのため原記載からは、野生での正確な採集地をたどることができません。

その4年後の1874年。エドゥアール・モレン(Édouard Morren)がこの植物をEcheveria属へ移し、Echeveria carnicolor (Baker) É.Morren となりました。

現在も独立した種として認められています。しかし、現在知られている野生分布を理解するには、後世に残された植物標本が重要になります。

1906年、テナンパから標本が残された

1906年11月。ドイツ出身の植物採集家カール・アルベルト・プルプス(Carl Albert Purpus)が、Veracruz州のBarranca de Tenampaで Echeveria carnicolor を採集しています。

採集番号は、C. A. Purpus 06.357です。

この植物の標本は現在、Harvard University HerbariaにGH 01987561として保存されています。

1870年の原記載では詳しい野生採集地をたどれなかった Echeveria carnicolor ですが、20世紀初頭にはBarranca de Tenampaという具体的な場所と結びついた標本が残されていました。

「Tenampa」という名前を実際の植物標本までたどることができる重要な記録です。

1973年にも同じ地域で採集された

Tenampaの記録は、Purpusの標本だけではありません。

1973年11月には、フェリペ・オテロ(Felipe Otero)がBarranca de Tenampaで Echeveria carnicolor を採集しています。

採集番号はOtero 4216。標本はメキシコ国立植物標本庫(MEXU)に、MEXU 00205604として収蔵されています。

1906年のPurpus 06.357から約67年後。再びBarranca de Tenampaという同じ地域名を伴った Echeveria carnicolor の標本が残されました。

一度だけの古い採集記録ではなく、異なる時代の標本からTenampaとカルニカラーの関係を確認できます。

テナンパは現在の植物資料にも残っている

Tenampaとカルニカラーの関係は、古い標本だけの話ではありません。

Veracruzの地域植物資料でも、Echeveria carnicolor は州中央部から知られる植物として扱われています。

具体的な地域として記録されているのが、CalcahualcoとTenampaです。

つまりTenampaは、1906年の一枚の標本だけを根拠に残っている産地ではありません。複数時代の標本と、その後の植物調査の中でも確認されてきた地域です。

100年以上後、テナンパの植物が研究材料になった

さらに現代になると、Tenampa産のカルニカラーは細胞レベルの研究にも使われています。

2021年、Echeveria属23種について染色体数、倍数性、核DNA量を調べた研究が発表されました。

そこで Echeveria carnicolor の研究材料として使われたのがJE-8374です。

採集地はBarranca de Tenampa, Tenampa, Veracruz。標高は762mです。

この植物では染色体数2n = 36が確認され、二倍体として解析されました。

Tenampaの植物は現在、「この地域に生えている」という分布記録だけではなく、その細胞の中にある染色体まで調べられています。

テナンパにはどんな環境があるのか

Barranca de Tenampaは、カルニカラーだけが生育する場所ではありません。

2010年には、同じ地域で野生の Sedum morganianum が確認されたことも報告されています。

その調査では、Barranca de Tenampaの急な岩壁に多肉植物や乾燥環境に適応した植物が生育する様子が記録されました。

周辺からは、Echeveria carnicolor、Sedum morganianum、Mammillaria、Selenicereus、Beaucarnea、Hechtia、Agave などの植物が記録されています。

峡谷の斜面や岩壁には、周囲とは異なる環境が生まれます。カルニカラーも、こうしたVeracruz中央部の峡谷環境に生育する多肉植物のひとつです。

「カルニカラー テナンパ」をどう記録するか

Tenampaは正式な変種名や園芸品種名ではありません。

そのため、Echeveria carnicolor var. Tenampa や Echeveria carnicolor ‘Tenampa’ という正式名称としては扱いません。

一方、Tenampaという地域名そのものには、はっきりした植物学的な裏付けがあります。

1906年のC. A. Purpus 06.357、1973年のFelipe Otero 4216、そして現代の研究材料JE-8374。いずれもBarranca de Tenampaという地域につながります。

そのためtanitanien植物図鑑では、「Tenampaの地域名を伴って流通する Echeveria carnicolor 系統」として記録します。

ただし、現在流通している「カルニカラー テナンパ」が、これら特定の採集個体から直接受け継がれた植物であるとまでは断定しません。

野生での産地が確認できることと、現在の流通株の系譜が確認できることは別だからです。

100年以上残り続ける「Tenampa」という産地

Echeveria carnicolor が最初に記載された1870年には、原記載から詳しい野生採集地をたどることができませんでした。

しかし、その後の資料には具体的な記録が残されていきます。

1906年、PurpusがBarranca de Tenampaで採集。1973年、Oteroが同じ地域で採集。

その後の地域植物資料でもTenampaから Echeveria carnicolor が記録されました。

そして現代では、Barranca de Tenampaで採集されたJE-8374が染色体研究に使われています。

古い標本と現代の研究は、時代も目的も違います。それでも、その記録に繰り返し現れる場所があります。Barranca de Tenampaです。

「カルニカラー テナンパ」という名前から、ひとつの地域で100年以上にわたって残されてきた植物の記録をたどることができます。

異名・旧学名

  • Cotyledon carnicolor Baker

出典・参考資料

  • Baker, J.G. (1870). Cotyledon carnicolor. Refugium Botanicum 3: t. 199.
  • Morren, É. (1874). Echeveria carnicolor. La Belgique Horticole 24: 158.
  • Plants of the World Online (POWO), Royal Botanic Gardens, Kew. Echeveria carnicolor (Baker) É.Morren.
  • International Crassulaceae Network. Echeveria carnicolor (Baker) É.Morren.
  • Harvard University Herbaria. Echeveria carnicolor, C. A. Purpus 06.357, November 1906, Barranca de Tenampa, Veracruz. GH 01987561.
  • Herbario Nacional de México (MEXU), Universidad Nacional Autónoma de México. Echeveria carnicolor, Felipe Otero 4216, November 1973, Barranca de Tenampa, Veracruz. MEXU 00205604.
  • Jimeno-Sevilla, H.D. Echeveria carnicolor. In: Atlas de la Flora de Veracruz.
  • Jimeno-Sevilla, H.D. et al. (2010). Reporte de una población silvestre de Sedum morganianum E. Walther (Crassulaceae). Acta Botanica Mexicana 91: 13–20.
  • Palomino, G. et al. (2021). Chromosome Number, Ploidy Level, and Nuclear DNA Content in 23 Species of Echeveria (Crassulaceae). Genes 12(12): 1950.