カリコーサ ウルアパン

Chazaroa calycosa (Moran) A.Vázquez & Padilla-Lepe

カリコーサ ウルアパン(Chazaroa calycosa (Moran) A.Vázquez & Padilla-Lepe)|tanitanien植物図鑑

基本情報

科
Crassulaceae
属
Chazaroa
学名
Chazaroa calycosa (Moran) A.Vázquez & Padilla-Lepe
命名者・著者引用
(Moran) A.Vázquez & Padilla-Lepe
記載年
2023

分布

原産国
Mexico
州・地域
Michoacán・Guerrero
具体的産地
Uruapan周辺

自生地に関する記録

Michoacán州Uruapan南方のRío Cupatitzio周辺などに分布。1966年のタイプ採集Moran 13424に基づき、2023年にEcheveria属からChazaroa属へ移された原種。

本文/補足・記録

「カリコーサ ウルアパン」という名前を見ると、Uruapanという地域名を付けて流通している植物のようにも見えます。

ところが資料をたどると、このUruapanという名前は植物の原点までつながっています。

1966年、レイド・モラン(Reid Moran)がUruapanの南方で植物を採集しました。

その植物が翌年、新種 Echeveria calycosa として発表されます。

そして現在、この植物はEcheveria属ではありません。

2023年に新しく設けられたChazaroa(チャザロア属)へ移され、Chazaroa calycosa という名前になっています。

Uruapanという地域名から、野生での採集、新種記載、そして現在の学名までたどることのできる植物です。

ウルアパンから始まったカリコーサ

1966年7月27日。

レイド・モラン(Reid Moran)は、Mexico(メキシコ)のMichoacán(ミチョアカン)州でこの植物を採集しました。

場所はUruapan(ウルアパン)から南へ約14 miles。Río Cupatitzio(リオ・クパティツィオ)の峡谷と、その支流Arroyo de la Tinaja Verde(アロヨ・デ・ラ・ティナハ・ベルデ)周辺です。

標高は約1,200m。採集番号はMoran 13424でした。

Harvard University Herbariaに保存されている標本には、生育環境についても記録があります。

植物は、ほぼ垂直になった岩や土手に生育していました。

つまり「Uruapan」は、後から園芸流通の中で付けられただけの地域名ではありません。この植物が新種として知られる出発点となった、実際の採集地域です。

Moran 13424が新種の基準になった

翌1967年、モランはこの植物を新種として発表しました。

そのときの学名が、Echeveria calycosa Moran です。

『Cactus and Succulent Journal』39巻に記載されました。

そして学名の基準となったのが、前年にUruapan南方で採集したMoran 13424です。

ホロタイプはSan Diego Natural History Museumの植物標本庫(SD)に置かれ、同じ採集に由来する標本も複数の植物標本庫へ保存されました。

そのひとつがHarvard University HerbariaのGH 00042468です。これはisotype(アイソタイプ)として現在も記録されています。

つまり、Uruapan周辺での採集、Moran 13424、1967年の Echeveria calycosa の新種記載まで、実際の標本を通してつながっています。

ウルアパンではその後も記録されている

Uruapanとの関係は、1966年のタイプ採集だけではありません。

その後もUruapan周辺からこの植物の標本が残されています。

1992年9月25日には、Michoacán州UruapanのLa Tzaráracua(ラ・ツァララクア)で、E. Pérez-CalixとS. Zamudioによって採集されました。

採集番号は2711。標本はメキシコ国立植物標本庫(MEXU)に、MEXU 988018として収蔵されています。

さらにこの標本に対応する植物のDNAデータは、2026年に発表されたベンケイソウ科の系統研究にも使用されています。

Uruapanは、1966年に一度だけ記録された場所ではありません。タイプ採集から後年の標本、さらにDNA研究までつながる重要な地域です。

長い間「エケベリア」として知られてきた

1967年に記載されてから、この植物は長い間、Echeveria calycosa という名前で扱われてきました。

「calycosa」という種小名は、目立つ萼(がく)に由来します。

実際、この植物は花に対して大きく目立つ萼片を持つことが特徴のひとつです。

園芸でも「エケベリア・カリコーサ」として知られてきました。

しかし、エケベリアとその近縁植物について形態やDNAを使った研究が進むと、従来Echeveria属として扱われてきた植物が、すべてひとつのまとまりになるわけではないことが見えてきました。

カリコーサも、その分類が見直された植物のひとつです。

2023年、新しいChazaroa属へ

2023年、ホセ・アントニオ・バスケス=ガルシア(José Antonio Vázquez-García)らによって、Chazaroa(チャザロア)という新しい属が発表されました。

この新属には、Echeveria calycosa、Echeveria valvata、Echeveria yalmanantlanensis として知られていた3種が移されました。

カリコーサには、Chazaroa calycosa (Moran) A.Vázquez & Padilla-Lepe という新しい組み合わせが作られました。

現在のキュー王立植物園のPlants of the World Online(POWO)でも、Chazaroa calycosa がaccepted nameとして採用されています。

一方、Echeveria calycosa Moran は、同じタイプMoran 13424に基づくhomotypic synonym(同タイプ異名)として扱われています。

植物そのものが別の植物になったわけではありません。分類上の位置がEcheveria属からChazaroa属へ変更されたことで、属名が変わったのです。

なぜChazaroaとして分けられたのか

Chazaroa属には、共通する特徴があります。

ロゼットを作る多年生の多肉植物で、葉は比較的薄く、縁がはっきりしています。

花序は最初下向きに伸び、その後立ち上がります。

特に特徴的なのが花です。萼片が大きく、花冠に近い長さになり、花弁はつぼみの段階で縁同士が接するように並びます。

種子にも共通した特徴があります。

2023年の研究では、こうした形態的なまとまりと、それまでの系統研究で示されていた関係を合わせて、Echeveriaとは別の属としてChazaroaが設けられました。

属名のChazaroaは、メキシコの植物学者ミゲル・J・チャザロ=バサニェス(Miguel J. Cházaro-Basáñez)に献名されたものです。

カリコーサだけが移されたわけではない

Chazaroaへ移されたのは、カリコーサだけではありません。

2023年にChazaroa属として整理されたのは、Chazaroa calycosa、Chazaroa valvata、Chazaroa yalmanantlanensis の3種です。

この3種は、それ以前から形態的な共通点が知られていました。

特に Echeveria calycosa、Echeveria valvata、Echeveria yalmanantlanensis は、ロゼットや花序、萼片、花冠などを比較した研究でも近い特徴を持つ植物として扱われています。

そのため今回の変更は、「カリコーサだけの学名が突然変わった」というものではありません。近い特徴を持つ植物のまとまりを、Chazaroaという属として整理した分類変更です。

「カリコーサ ウルアパン」という名前をどう扱うか

園芸では今後も、「エケベリア カリコーサ」「カリコーサ ウルアパン」といった名前を見ることがあるかもしれません。

Echeveria calycosa は単なる誤名ではありません。1967年にモランがこの植物を正式に記載したときの学名であり、2023年まで長く使われてきた名前です。

ただし現在の分類では、Chazaroa calycosa がaccepted nameとなっています。

そして「Uruapan」という地域名にも、はっきりした植物学的な裏付けがあります。この植物のタイプとなったMoran 13424そのものが、Uruapan南方で採集されているからです。

そのためtanitanien植物図鑑では、検索入口として「カリコーサ ウルアパン」という植物名を残しながら、現在の学名を Chazaroa calycosa として記録します。

地域名から現在の学名までたどることができる

「Uruapan」という地域名から資料をたどると、この植物の歴史が一本につながります。

1966年、Uruapan南方でモランがMoran 13424を採集。1967年、その植物をもとに Echeveria calycosa が記載されました。

その後もUruapan周辺で標本が採集されました。

そして近縁植物の研究が進み、2023年には新しいChazaroa属へ移されました。

現在の名前は、Chazaroa calycosa。

「カリコーサ ウルアパン」は、単に地域名が付いて流通している植物ではありません。

Uruapanという場所から、タイプ標本、新種記載、後年の標本、そして現在の分類までたどることのできる植物です。

異名・旧学名

  • Echeveria calycosa Moran

出典・参考資料

  • Moran, R. (1967). Echeveria calycosa. Cactus and Succulent Journal (Los Angeles) 39: 14–16.
  • Vázquez-García, J.A., Padilla-Lepe, J., Rosales-Martínez, C.S., Reyes Santiago, J., Islas Luna, M.A. & Cochrane, T.S. (2023). Chazaroa y Quetzalcoatlia, dos géneros nuevos segregados respectivamente de Echeveria y Graptopetalum (Crassulaceae, Saxifragales). Boletín Nakari 34(2): 37–43.
  • Plants of the World Online (POWO), Royal Botanic Gardens, Kew. Chazaroa calycosa (Moran) A.Vázquez & Padilla-Lepe.
  • International Plant Names Index (IPNI). Chazaroa calycosa (Moran) A.Vázquez & Padilla-Lepe.
  • Harvard University Herbaria. Echeveria calycosa Moran, R.V. Moran 13424, GH 00042468, isotype.
  • Portal de Datos Abiertos UNAM, Herbario Nacional de México (MEXU). Echeveria calycosa Moran, E. Pérez-Calix & S. Zamudio 2711, MEXU 988018, La Tzaráracua, Uruapan, Michoacán.
  • de la Cruz-López et al. (2026). Phylogenetic analysis and the recognition of a new genus for Mexican Crassulaceae segregated from Echeveria.