アフィニス

Echeveria affinis E.Walther

アフィニス(Echeveria affinis E.Walther)|tanitanien植物図鑑

基本情報

科
Crassulaceae
属
Echeveria
学名
Echeveria affinis E.Walther
命名者・著者引用
E.Walther
記載年
1958

分布

原産国
Mexico
州・地域
Chihuahua–Sinaloa
具体的産地
原記載の正確な採集地は不明

自生地に関する記録

POWOではChihuahuaからSinaloaにかけて分布。原記載のタイプは正確な採集地不明だが、後年にはDurango州Mexiquillo付近の標本MEXU 1515939とDNAデータが研究に利用されている。

本文/補足・記録

アフィニスは、濃い葉色でも知られる Echeveria affinis という原種です。

1958年に新種として記載され、現在も独立した種として認められています。

ところが、この植物には少し変わった歴史があります。

最初に新種として記載されたとき、その植物がメキシコのどこで採集されたのか、正確な場所が分かっていなかったのです。

1958年に新種として記載された

Echeveria affinis は、1958年にエドワード・エリック・ウォルター(Edward Eric Walther)によって記載されました。

発表されたのは『Cactus and Succulent Journal』30巻4号、105–107ページです。

タイプ標本はCAS 403156。

CASはCalifornia Academy of Sciences(カリフォルニア科学アカデミー)の植物標本庫を示すコードです。

タイプの産地情報は、

Mexico, without definite locality

つまり「メキシコ、正確な場所は不明」とされています。

原記載につながった植物はフリッツ・シュヴァルツ(Fritz Schwarz)が採集したもので、その後R. Floresからポール・ハッチソン(Paul Hutchison)へ渡り、栽培されました。

さらにStrybing Arboretum(ストライビング樹木園)で育てられた植物が、ウォルターによる新種記載につながっています。

野生で採集された植物に由来する一方、その最初の採集地点を正確にはたどれないという来歴を持っています。

「affinis」はクライギアナとの類似を表している

種小名の「affinis」は、ラテン語で「近縁の」「似ている」といった意味を持つ言葉です。

この名前については、Echeveria craigiana(エケベリア・クライギアナ)との類似を表したものとされています。

実際、アフィニスとクライギアナは比較されてきた植物です。

つまり「affinis」という種小名にも、よく似た別のエケベリアとの関係を意識して研究された歴史が残っています。

原記載の葉は褐色を帯びたオリーブ色

アフィニスというと、園芸では黒っぽい葉を思い浮かべることが多いかもしれません。

しかし、原記載に残された色の表現を見ると、単純に「黒いエケベリア」と説明できる植物ではありません。

ウォルターの記載では、葉は褐色を帯びたオリーブ色で、基部は黄緑色。

葉は長さ約5cm、幅約2cmまでで、多数の葉が密なロゼットを作ります。

花は鮮やかな赤色です。

そのため、園芸で強調される濃い葉色だけを Echeveria affinis の決め手とするのではなく、葉や花など複数の特徴を合わせて見る必要があります。

後の採集で野生のアフィニスが見えてきた

原記載に使われた植物の正確な採集地は分かりませんでした。

しかし、その後の採集によって、野生の Echeveria affinis の記録が蓄積されていきます。

現在のPlants of the World Online(POWO)では、自然分布域をメキシコのChihuahua(チワワ)からSinaloa(シナロア)にかけてとしています。

そして現在では、具体的な採集地点まで分かる標本を使ったDNA研究も行われています。

2026年に発表されたエケベリア類の系統研究では、Durango(ドゥランゴ)州Pueblo Nuevo(プエブロ・ヌエボ)のMexiquillo(メシキージョ)付近で採集された Echeveria affinis が研究に使われました。

採集地はMexiquilloの滝から約2.3km、トンネルへ向かう道沿いで、標高2,480m。

2012年9月26日にS. GonzálezとJ. Noriegaによって採集され、採集番号は7958です。

標本はメキシコ国立植物標本庫(MEXU)に、

MEXU 1515939

として収蔵されています。

さらに、この標本に対応する植物から得られたDNAデータが系統解析に使用されています。

1958年には正確な採集地点が分からない植物をもとに記載されたアフィニスですが、現在では野生個体を具体的な採集地点、標本、DNAデータまでつなげて研究できるようになっています。

アフィニスだと思われていた別の植物もあった

アフィニスに似た植物を見分ける難しさをよく示しているのが、Echeveria coppii(エケベリア・コッピイ)です。

この植物は1968年、デニス・ブリードラブ(Dennis E. Breedlove)によってSinaloa(シナロア)州で採集されました。

採集地はSierra Surutato(シエラ・スルタト)のLos Hornosから南東約6マイル、標高約2,275mの場所でした。

その植物は研究者リード・モラン(Reid Moran)やチャールズ・H・ウール(Charles H. Uhl)によって知られていましたが、長い間「Echeveria cf. affinis」や未記載種として扱われていました。

モランは標本を作り、詳しい記載まで残していましたが、生前に新種として正式発表することはありませんでした。

それから約半世紀後の2020年。

ギデオン・F・スミス(Gideon F. Smith)とマルグリット・ビショフベルガー(Margrit Bischofberger)によって、この植物は Echeveria coppii として正式に記載されました。

現在は Echeveria affinis とは別の種として扱われています。

よく似ている植物でも、詳しく調べると別種であることが分かる場合があることを示す例です。

標本と研究によって少しずつ姿が見えてきた

アフィニスは、園芸では濃い葉色が強く印象に残る植物です。

しかし、その記録をたどると別の面が見えてきます。

1958年に記載されたとき、タイプにつながる植物の正確な野生採集地は分かっていませんでした。

その後、野生個体の採集記録が蓄積され、現在では具体的な採集地点と標本が残された植物をDNA研究にも利用できるようになっています。

さらに、かつてアフィニスに近いと考えられていた植物の中から、Echeveria coppii という別種も記載されました。

アフィニスは、最初からすべてが分かっていた植物ではありません。

野生での採集、標本の保存、似た植物との比較、そしてDNAを使った研究が積み重なることで、Echeveria affinis という植物をより詳しく調べられるようになってきた原種です。

出典・参考資料

  • Walther, E. (1958). Echeveria affinis. Cactus and Succulent Journal (Los Angeles) 30(4): 105–107.
  • Plants of the World Online (POWO), Royal Botanic Gardens, Kew. Echeveria affinis E.Walther.
  • International Crassulaceae Network. Echeveria affinis E.Walther.
  • de la Cruz-López et al. (2026). Phylogenetic analysis and the recognition of a new genus for Mexican Crassulaceae segregated from Echeveria. TAXON. Echeveria affinis: S. González & J. Noriega 7958, MEXU 1515939, Mexiquillo, Pueblo Nuevo, Durango.
  • Smith, G. F. & Bischofberger, M. (2020). Echeveria coppii Moran ex Gideon F.Sm. & Bischofberger (Crassulaceae), a new species from Sinaloa, Mexico. Bradleya 38: 70–74.
  • World Flora Online. Echeveria affinis E.Walther.