Echeveria agavoides var. multifida
基本情報
- 科
- Crassulaceae(ベンケイソウ科)
- 属
- Echeveria
- 学名
- Echeveria agavoides var. multifida
- 命名者・著者引用
- E.Walther
- 記載年
- 1972
分布
- 原産国
- Mexico(メキシコ)
- 州・地域
- San Luis Potosí(サン・ルイス・ポトシ)
自生地に関する記録
本文/補足・記録
## 植物名
アガボイデス・マルチフィダ
## 基本情報
・植物名:アガボイデス・マルチフィダ
・学名:Echeveria agavoides var. multifida E.Walther
・科名:Crassulaceae(ベンケイソウ科)
・属名:Echeveria
・命名者:E.Walther
・記載年:1972
・基礎となる種:Echeveria agavoides Lem.
Kew Plants of the World Online(キュー・プランツ・オブ・ザ・ワールド・オンライン/POWO)では、2026年現在、Echeveria agavoides var. multifida E.Waltherをaccepted variety(アクセプテッド・バラエティ/受容されている変種)として扱っています。
## 分布
・原産国:Mexico(メキシコ)
・地域:San Luis Potosí(サン・ルイス・ポトシ)
POWOではnative range(ネイティブ・レンジ/自然分布域)をMexicoのSan Luis Potosíとし、生育バイオームをdesert or dry shrubland(デザート・オア・ドライ・シュラブランド/砂漠または乾燥低木地)としています。
一方、International Crassulaceae Network(インターナショナル・クラッスラシー・ネットワーク/ICN)では、Walther(ウォルター)が記載に使用した栽培株の正確な野生由来は不明で、野生では確認されていないと説明されています。
そのため、POWOがSan Luis Potosíを自然分布域としていることと、Waltherの原記載株がSan Luis Potosíの特定地点から採集されたことが確認されていることは、同じ意味ではありません。
Hacienda de San Francisco(アシエンダ・デ・サン・フランシスコ)との関連を示す資料もありますが、確定した自生地としては扱いません。
## タイプ・栽培株情報
ICN系資料では、Waltherのvar. multifidaについてCAS 413922がタイプとして示されており、University of California Botanical Garden(ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア・ボタニカル・ガーデン)で栽培されていた植物に由来するとされています。
一方、後述する‘Red Edge’にはUCBG 50.677という別の栽培株記録があります。
CAS 413922とUCBG 50.677が同一個体または同一標本であることは確認されていないため、両者を同一のものとして扱いません。
## 分類
POWOおよびIPNIでは、Echeveria agavoides var. multifida E.WaltherをWaltherの『Echeveria』p.85(1972)に基づく名称として扱っています。
一方、ICNでは、Waltherが1972年にvar. multifidaと‘Red Edge’を同時に提示したことについて命名上の問題を指摘し、Waltherによるvar. multifidaを命名上成立していないものと解釈しています。
ただし、POWOでは2026年現在もvar. multifidaをaccepted varietyとして扱っています。
そのため、tanitanien植物図鑑では「var. multifidaは無効名である」と断定せず、POWOとICNで扱いが異なることをそのまま記録します。
## Multifidaという名前
“multifida(マルチフィダ)”は、「多く分かれる」「多分岐する」といった意味に関連する名称です。
ICNでは、この名称を特徴的な多分枝する花序と関連付けて説明しています。
Waltherの記載でも、1本の花茎から複数のraceme(レースィーム/総状花序)が分岐する特徴が示されています。
そのため、Multifida / Red Edgeを単に「葉の縁が赤いアガボイデス」として判断するのではなく、多分枝する花序も重要な特徴として扱う必要があります。
## Red Edgeとの関係
ICNでは、Echeveria agavoides ‘Red Edge’をvar. multifidaと密接に関係する園芸名として扱っています。
Waltherは1972年に‘Red Edge’という名称も提示しましたが、ICNではこの名称も命名上成立していないものと解釈しています。
その後1973年、Dodson(ドッドソン)がEcheveria agavoides ‘Red Edge’として発表し、ICNではこのDodson 1973の‘Red Edge’を正しい園芸名として扱っています。
また、International Succulent Institute(インターナショナル・サキュレント・インスティテュート/ISI)では1960年にISI 322を当初Echeveria agavoides var. corderoyiとして配布していましたが、後に誤同定として訂正され、1973年にDodsonによって‘Red Edge’として扱われました。
この経緯は、CorderoyiとMultifida / Red Edgeが同じ分類群であることを意味するものではなく、過去に誤同定されて流通した記録として扱います。
## 1998年のcultivar扱い
Myron Kimnach(マイロン・キムナック)は1998年、Echeveria agavoides ‘Multifida’としてcultivar(カルティバー/栽培品種)の位置で扱いました。
この扱いはCactus and Succulent Journal 70(6):300およびRepertorium Plantarum Succulentarum 49に記録されています。
一方、ICNではKimnachによる‘Multifida’についても命名上成立していないものと解釈しています。
そのため、「1998年に正式にcultivarへ変更された」とは扱いません。
## 現在の資料間差異
アガボイデス・マルチフィダには、現在、大きく3つの扱いが確認できます。
POWOでは、Echeveria agavoides var. multifida E.Waltherをaccepted varietyとして扱っています。
Kimnach 1998では、Echeveria agavoides ‘Multifida’をcultivarとして扱っています。
ICNでは、Walther 1972のvar. multifidaおよび‘Red Edge’、Kimnach 1998の‘Multifida’について命名上の問題を指摘し、Dodson 1973のEcheveria agavoides ‘Red Edge’を園芸名として扱っています。
tanitanien植物図鑑では、これらを一つの「正式名称」にまとめず、それぞれの資料で異なる扱いが存在するものとして記録します。
## 確認できていないこと
Waltherの原記載株について、正確な野生採集地点、野生採集者、フィールドナンバー、採集標高は今回確認できていません。
また、Hacienda de San Franciscoが確定した自生地であること、CAS 413922とUCBG 50.677が同一個体であることも確認できていません。
園芸流通で使用されるLipstick(リップスティック)についても、MultifidaやRed Edgeとの完全な同一性を裏付ける十分な資料は今回確認できていないため、正式なsynonym(シノニム/異名)としては扱いません。
出典・参考資料
- Kew Plants of the World Online(POWO)— Echeveria agavoides var. multifida E.Walther
- International Plant Names Index(IPNI)— Echeveria agavoides var. multifida E.Walther
- Walther, E. (1972). Echeveria, p.85.
- International Crassulaceae Network(ICN)— Echeveria agavoides var. multifida
- International Crassulaceae Network(ICN)— Echeveria agavoides ‘Red Edge’
- Repertorium Plantarum Succulentarum 49
- Kimnach, M. (1998). Echeveria agavoides ‘Multifida’. Cactus and Succulent Journal 70(6):300.