Echeveria carminea Alexander

基本情報
- 科
- Crassulaceae
- 属
- Echeveria
- 学名
- Echeveria carminea Alexander
- 命名者・著者引用
- Alexander
- 記載年
- 1941
分布
- 原産国
- Mexico
- 州・地域
- Oaxaca
- 具体的産地
- Santiago Lachiguiri・Jalapa間
自生地に関する記録
本文/補足・記録
カルミネアは、1941年にOaxaca(オアハカ)の植物として記載されたエケベリアです。
名前の由来になったのは、鮮やかなカーマイン色の花。
ところが、この植物を調べていくと別の問題が見えてきます。
よく似た Echeveria spectabilis(スペクタビリス)との混同です。
International Crassulaceae Network(ICN)は、Echeveria carminea として植物標本庫に保存されてきた標本の中にも、実際には Echeveria spectabilis と考えられるものが含まれていると指摘しています。
では、本来のカルミネアとはどのような植物なのでしょうか。1941年の原記載まで戻って見ていきます。
1939年、オアハカで採集された植物
カルミネアの記録は、1939年までさかのぼります。
トーマス・ベイリー・マクドゥーガル(Thomas Baillie MacDougall)の記録によると、1939年2月21日、MacDougallの案内人によって植物が採集されました。
場所はOaxaca州のSantiago LachiguiriとJalapaの間です。
この植物には、T. MacDougall B-17という番号が残されています。
後に、この植物が Echeveria carminea という種の基準になりました。
ここで重要なのは、MacDougall自身が採集したと単純に記録するのではなく、MacDougallの記録では彼の案内人が採集したとされていることです。
1941年、「カルミネア」として新種記載された
採集から2年後の1941年。エドワード・ジョンストン・アレクサンダー(Edward Johnston Alexander)は、この植物を新種として発表しました。
学名は、Echeveria carminea Alexander です。
『Cactus and Succulent Journal』13巻に掲載されました。
現在のキュー王立植物園のPlants of the World Online(POWO)でも、この学名がaccepted nameとして採用されています。
自然分布はMexico(メキシコ)のOaxaca(オアハカ)。80年以上が経過した現在も、独立した原種として認められています。
「carminea」は花の色から付いた名前
「carminea」という種小名は、この植物の花に由来します。
原記載では花冠の長さは22〜24mm、幅は17〜18mm。形は卵形から円錐形で、はっきりと角があります。
そして花冠の色はカーマイン色。先端部分は黄色です。
ICNも「carminea」という名前について、花の色に由来すると説明しています。
カルミネアは、葉ではなく印象的な花の色がそのまま種小名につながった植物です。
本来のカルミネアは細かな毛に覆われている
カルミネアを理解するうえで重要なのは、花だけではありません。
1941年の原記載では、植物体の各部が細かな毛状の構造に密に覆われる植物として記載されています。
茎は伸び、原記載で知られていたものでは高さ70cmほどになることもありました。
葉は長さ10〜12cm、幅2.5〜3cm。濃い緑色で、中央が深くV字状にくぼみます。
葉縁は黒紫色を帯び、葉の裏面は白みを帯びて細かな毛に覆われます。
つまりカルミネアは、「カーマイン色の花を咲かせるエケベリア」というだけではありません。毛の多い植物体と、深くくぼんだ細長い葉も重要な特徴です。
よく似たスペクタビリス
カルミネアを調べるときに避けて通れないのが、Echeveria spectabilis Alexander です。
スペクタビリスもカルミネアと同じアレクサンダーによって、同じ1941年に記載されました。
現在のPOWOでは、Echeveria spectabilis の自然分布をPuebla(プエブラ)とOaxaca(オアハカ)としています。
つまり両種はOaxacaで分布域が重なります。
ICNは、カルミネアとスペクタビリスは似たところがあり、特に若い植物では混同しやすいと指摘しています。
一方で、カルミネアの方が植物体の毛がはるかに多いことも示しています。
見た目が近く、分布域も一部重なる。これが両種を考えるうえで重要なポイントです。
「カルミネア」とされた標本にも混同があった
この問題は、園芸流通だけの話ではありません。
ICNは、UNAMの植物標本庫で Echeveria carminea とされていた標本についても注意を促しています。
ICNによれば、E. carmineaとされていた標本の多くは、採集地を照らし合わせると実際には Echeveria spectabilis に当たると考えられます。
つまり、「標本にEcheveria carmineaと書かれている」というだけで、すべてを本種の確実な記録として扱うことはできません。
植物標本に残された名前も、その後の研究によって見直されることがあります。これはカルミネアの分布を調べるときにも重要な注意点です。
では、何が違うのか
カルミネアとスペクタビリスは似ていますが、原記載まで戻るとカルミネアの特徴が見えてきます。
カルミネアでは、植物体全体に細かな毛状の構造が密にあります。
葉は長さ10〜12cmほどで、中央が深くV字状にくぼみ、縁は黒紫色を帯びます。
花冠は22〜24mmほど。カーマイン色で、先端が黄色になります。
一方、スペクタビリスも表面に細かな突起を持つ植物ですが、葉の形や付き方などはカルミネアと異なります。
そのため一つの特徴だけで決めるのではなく、植物体の毛、葉の形、花の特徴、採集地などを合わせて判断する必要があります。
「どこで採れたか」も同定を考える手がかりになる
植物を見分けるとき、形だけが情報になるわけではありません。どこで採集されたのかも重要です。
カルミネアのタイプとなったT. MacDougall B-17には、Oaxaca、Santiago LachiguiriとJalapaの間、1939年2月21日という情報が残されています。
一方、後からカルミネアとされた標本を見直す場合にも、採集地は重要な手がかりになります。
植物標本には植物そのものだけではなく、採集地、採集日、採集者、採集番号といった情報が一緒に残されます。
カルミネアとスペクタビリスの混同は、こうした情報を植物と一緒に残すことの重要性がよく分かる例です。
原記載まで戻ると本来のカルミネアが見えてくる
Echeveria carminea は現在も独立した原種として認められています。
しかし、過去にその名前で同定された植物のすべてが、本当にカルミネアだったとは限りません。
そこで重要になるのが、名前が最初に発表されたときの記録です。
1939年のT. MacDougall B-17。1941年のアレクサンダーによる原記載。
そこまで戻ると、細かな毛に覆われた植物体、深くV字状にくぼんだ葉、黒紫色を帯びる葉縁、そしてカーマイン色で先端が黄色い花という、本来のカルミネアの特徴が見えてきます。
現在付いている名前だけを見るのではなく、最初の記載と採集記録まで戻って確認する。カルミネアは、その大切さがよく分かる植物です。
出典・参考資料
- Alexander, E.J. (1941). Echeveria carminea. Cactus and Succulent Journal (Los Angeles) 13(8): 138–139, fig. 81.
- Plants of the World Online (POWO), Royal Botanic Gardens, Kew. Echeveria carminea Alexander.
- International Plant Names Index (IPNI). Echeveria carminea Alexander.
- International Crassulaceae Network. Echeveria carminea Alexander. Type, original description, distribution and taxonomic notes.
- Plants of the World Online (POWO), Royal Botanic Gardens, Kew. Echeveria spectabilis Alexander.
- International Crassulaceae Network. Echeveria spectabilis Alexander. Original description and taxonomic notes.
- World Flora Online. Echeveria carminea Alexander.