Echeveria amoena De Smet ex É.Morren

基本情報
- 科
- Crassulaceae
- 属
- Echeveria
- 学名
- Echeveria amoena De Smet ex É.Morren
- 命名者・著者引用
- De Smet ex É.Morren
- 記載年
- 1875
分布
- 原産国
- Mexico
- 州・地域
- Puebla–Veracruz
- 具体的産地
- Perote(Veracruz)
自生地に関する記録
本文/補足・記録
アモエナ ペローテは、Echeveria amoena にPerote(ペローテ)という地域名を伴って流通している植物です。
地域名付きのエケベリアを調べるとき、その場所に本当に同じ種が生育しているのかは重要な手がかりになります。
ペローテの場合、その関係をかなり具体的なところまでたどることができます。
Veracruz(ベラクルス)州のPerote周辺で採集された植物について、詳しい記録が残されているからです。
アモエナは1875年に発表された原種
Echeveria amoena は、1875年に発表されたエケベリアです。
学名は Echeveria amoena De Smet ex É.Morren。
ルイ・ド・スメ(Louis De Smet)の名前をもとに、エドゥアール・モラン(Édouard Morren)によって発表されました。
現在もキュー王立植物園のPlants of the World Online(POWO)で独立した種として認められています。
POWOが示す自然分布は、メキシコのPuebla(プエブラ)からVeracruz(ベラクルス)にかけてです。
1875年の記載では、前年の1874年にメキシコから導入された植物として紹介されています。
小型で密な株を作り、葉は淡い灰青色にピンクを帯び、花は赤橙色と記録されています。
ペローテ付近では実際に植物が採集されている
今回特に重要なのがPeroteという地域名です。
1975年にホルヘ・メイラン(Jorge Meyrán)が発表した記録によると、その数年前にPeroteの南西約15kmでエケベリアが見つかっていました。
その植物は当初、Echeveria amoena と暫定的に同定されました。
さらに1959年1月、メイランはエドワード・ウォルター(Edward Eric Walther)とともに再び植物を観察しています。
興味深いことに、ウォルターもその正体について迷っていました。
Echeveria amoena の可能性を考えながら、よく似た Echeveria microcalyx の可能性も完全には否定できなかったのです。
その後、周辺で採集された植物との比較などを経て、1975年の資料ではPerote付近の植物が Echeveria amoena として掲載されています。
つまりPeroteという名前は、単に園芸流通の中で付けられた地域名ではありません。
この周辺で実際に調査・採集された Echeveria amoena の記録までたどることができます。
ペローテの植物は形まで記録されている
1975年の資料が重要なのは、採集場所だけではありません。
Perote付近の Echeveria amoena について、植物の形も詳しく記録されています。
ロゼットには20~30枚ほどの葉がつき、葉は長さ約15~23mm、幅約6~9mm。
花茎は約11~16cmと記録されています。
葉、花茎、花序、花についても詳しく観察されました。
International Crassulaceae Network(ICN)にも、Perote(Veracruz)の Echeveria amoena が写真資料とともに掲載されています。
ICNでは、Peroteの植物について、より長い花序を持つものとして紹介しています。
Peroteという地域名の背景には、場所だけでなく、そこで確認された植物そのものの記録も残されています。
最初から簡単にアモエナと分かったわけではない
Peroteの記録で興味深いのは、現地で見つかった植物が最初から迷いなく Echeveria amoena と判断されたわけではないことです。
比較されたのが Echeveria microcalyx でした。
当時は別種として扱われていたため、ウォルターも両者のどちらなのか判断に迷っています。
現在のPOWOでは Echeveria microcalyx を Echeveria amoena の採用異名には挙げていません。
一方、歴史的な資料では両者が同じ植物として扱われることもあり、分類上の扱いには変化がありました。
Peroteの記録は、野生で植物を見つけることと、その植物に正しい名前を付けることが別の問題であることをよく示しています。
アモエナの名前を固定したのは後から選ばれた図だった
Echeveria amoena の名前には、もうひとつ興味深い歴史があります。
1875年の最初の記載では、現在の命名規約で名前の基準となるタイプが指定されていませんでした。
そこで後に、1904年に Echeveria pusilla として発表された植物の図が、Echeveria amoena のネオタイプとして選ばれています。
ネオタイプとは、もともとのタイプが存在しない場合などに、後から学名の基準として選ばれる標本や図のことです。
この場合に選ばれたのは、1904年の『Gartenflora』に掲載された Echeveria pusilla の図です。
そして現在のPOWOでは、
Echeveria pusilla A.Berger
を Echeveria amoena の異名として扱っています。
19世紀に記載されたアモエナという名前が、後の植物資料によって整理され、現在まで使われていることが分かります。
「ペローテ」という名前には野生分布の裏付けがある
アモエナ ペローテについて現在確認できる情報を整理すると、Peroteと Echeveria amoena の間には植物学的な接点があります。
Echeveria amoena はPueblaからVeracruzに自然分布しています。
Perote周辺では実際に植物が採集され、Echeveria amoena として詳しい形態記録が残されています。
ICNにもPeroteの Echeveria amoena が写真資料とともに掲載されています。
そのため「Perote」は、Echeveria amoena の実際の生育記録と結びつけられる地域名として扱うことができます。
現在の流通株との系譜は別に考える
ただし、最後にひとつ分けて考えておく必要があります。
Perote周辺に Echeveria amoena が生育していることと、現在「アモエナ ペローテ」の名前で流通している植物が、過去にPeroteで採集された特定の植物から直接増殖されたものであることは同じではありません。
今回確認した資料からは、現在の流通株を特定の採集個体まで連続して追うことはできませんでした。
そのためtanitanien植物図鑑では、
「Peroteの地域名を伴って流通する Echeveria amoena 系統」
として記録します。
ただし今回のPeroteは、単に産地らしい名前が付いているだけではありません。
Veracruz州Perote周辺には、実際に調査・採集された Echeveria amoena の記録が残されています。
流通株そのものの系譜と、Peroteに野生のアモエナが記録されているという事実を分けて残すことで、この植物の名前の背景をより正確に記録できます。
異名・旧学名
- Echeveria pusilla A.Berger
出典・参考資料
- Morren, É. (1875). Echeveria amoena. La Belgique Horticole 25: 216.
- Plants of the World Online (POWO), Royal Botanic Gardens, Kew. Echeveria amoena De Smet ex É.Morren.
- International Plant Names Index (IPNI). Echeveria amoena De Smet ex É.Morren.
- International Crassulaceae Network. Echeveria amoena De Smet ex É.Morren.
- Meyrán, J. (1975). Echeveria microcalyx. Cactáceas y Suculentas Mexicanas 20.
- Berger, A. (1904). Echeveria pusilla. Gartenflora 53: 206, fig. 30.